ROCKY MOUNTAIN ALTITUDE A30

リアルエンデューロモデル

過酷な下りと、長いリエゾンの上りのあるEWS(エンデューロ・ワールド・シリーズ)に参戦するロッキーマウンテンチームのフィードバックから生まれた新型ALTITUDEは、RIDE-4システム、アジャスタブルヘッドセット、カーボンモデルにはダウンチューブにストレージボックスが設けられるなど、各部に最新のトレンドを採用し、完全に新設計されたエンデューロ競技向けに開発されたモデルだ。

エンデューロ競技に求められる要素といえるのは、ハードな下りに対応可能な高い剛性とサスペンションのストローク量を必要としながら、ステージのスタート地点までの登坂もこなさなければならない。つまりバイクの総合力が最も問われるカテゴリーであり、現在各ブランドが開発に力を注いでいる。

そのなかでもこの新型ALTITUDEは、上記した総合的な性能を高いレベルでバランスさせたバイクといえる。フレームはサイズごとにチェーンステー長を変更するなど、細部に渡ってこだわったチューニングが施されており、どのサイズでもベストな乗り心地と性能を味わうことができるように設計されている。

ROCKY MOUNTAINのラインナップ

ロッキーマウンテンのダブルサスペンションのバイクラインナップは、フリーライド向けでダブルクラウンフォークの装着も可能な「SLAYER」。エンデューロ向けにはこの「ALTITUDE」、トレイル向けには「INSTINCT」、クロスカントリー向けは「ELEMENT」と、主に走行するフィールドと用途によって明確になっている。

すべてのモデルに簡単にジオメトリー変更可能なRIDE-4システムを搭載しており、走行するコースや好みによって4段階にジオメトリーを変更することができるので、さまざまな乗り味や用途を楽しめる仕様となっている。

試乗インプレッション

今回試乗したモデルはアルミモデルのMサイズ。主催の内嶋氏のはからいで、富士見高原のENS試走日に実際のコースで試乗させていただいた。

身長173cmで普段から大きめのバイクになれている自分でも、このモデルはMでジャストサイズだった。駐車場で跨がりその周囲を回っただけで、取り回しや旋回性にも全く不安感がなく、軽快な乗り味を感じ取れる。静止時にもちあげると、ちょっと重いという印象があったが、実際に乗りはじめると軽快そのもの。これは ”走る” バイクに共通した乗り味であることは、いままでの経験から予測できたので、試乗に期待が膨らんだ。ハンドルポジションを自分好みにちょっと下げ、コースに向かう登坂路を登った。

残念ながら自分の登坂力は一般レベル以下であり、普段からトレイルで乗り込んでいる選手達には全くといっていいほどついて行くことはできないのだが、そんな自分でもフロント170、リア160mmストロークの下り系バイクなのによく登るという印象を受けた。上りでラクとか、軽快さを感じることはなかったが、のんびりと上るには問題のない登坂性能はもっていた。

一方で下りはかなり楽しむことができた。試乗したコースの走行は初めてだったので、数ヶ所で岩や切り株の間を抜けるため、無理にラインを変更しなければならなかったのだが、ちょっとだけきっかけを作り、荷重方向を変化させるだけで、容易にラインを修正することができ、スピードを極端に失うことなく走破することができた。

個人的な考え方かもしれないが、エンデューロ競技ではコースが長く、試走回数も限られてしまうため、ラインを完全には覚えきれないため、その都度走行ラインを修正しながら走行し、コースのどのラインを走るかという瞬時の判断が必要となる。そのためにしっかりとした安定感と軽快に振り回せるといった相反する性能が欲しいのだが、双方のバランスをよく考慮されていることがわかる。その絶妙なバランス性能のおかげもあって、初見のコースでもある程度のスピードで飛ばしていくことができた。

少しバイクに慣れてきたところで、ちょっとスピードを上げ、大きめのギャップやドロップオフにオーバースピード気味で突っ込んでみたが、全く不安感がなくフロント周りには非常に高い剛性を感じることができた。標準で装着されていたフォークは十分な仕事をこなしていた。また、バームの付いたコーナーへ、ちょっと強くリアタイヤを当て込んでも、リアフレームやBB周りに剛性不足を感じることはなく、立ち上がりでしっかりとバイクを前に進めることができた。

このコースを走行したことのある選手はわかるだろうが、ステージ3後半の荒れたフラット区間。疲労度がたまっている状態でコンマ数秒でもタイムを削るために必死に漕がなければならないセクションをちょっと本気で走ってみたが、路面の凹凸による失速感がほとんどなく、路面にあわせながら、ちょっと重たいギアを踏んでいくようなペダリング時でも、しっかりと路面にトラクションがかかり、気持ちよく走行できたのが非常に印象的だった。

急斜面のブレーキングや、続くタイトなコーナリングなども、ほとんどキックバックのないLC2Rサスペンションシステムの特長によって、サスペンションの動きが妨げられないため、しっかりと路面を捉えており、総合的にかなり優れた性能をもっていることがよくわかった。常にサスペンションとリンクシステムが自然な動きをしているので、自分の乗り方との折り合いを付けやすく、ちょっと乗るだけで慣れることができ、攻めても軽く流した走り方でも気持ちよく走行することができた。低重心化の恩恵もあり、安定感がありながらS字コーナーでの切り返しも軽快。自分の好みでいえば、試乗したコースではほんの少しだけ腰高感があるように感じられたので、もう少しBB位置が低い方がいいかなと思ったが、RIDE-4のチップを回転させるだけで調整が可能なので、ライダーの乗り方のクセやコース状況、好みに合わせて変更ができるという機構は非常にありがたく、そうした調整機能を上手く利用することで、自分好みのセッティングを探し出すことで、手放せない1台となるだろう。

どんな人にオススメか

里山のトレイルを楽しみながら走行するのであれば、ストローク、剛性ともにここまでのスペックは必要なく、逆に楽しみをスポイルしてしまうかもしれない。常設コースであるふじてんや、富士見パノラマの旧Bコースなど、路面が荒れている場面では活躍する。富士見の旧Aコースやタイトなターンが続く部分でも回頭性の良さを発揮できるだろう。障害物を乗り越えたり、バイク上でアクションを起こす際にも不安感がなく、自信をもって走行でき、ENSのコースではギリギリまで攻めた走行も可能だ。荒れた路面+コギが必要な場面では、このバイクの真価が発揮できる。

メーカーには失礼な話だが、カーボンフレーム単体で購入するよりも、アルミ完成車のほうが断然リーズナブル。無理してカーボンを手に入れるよりも、このアルミモデルをカスタマイズベースに、好みのアップデートパーツを装着するという選択が賢い購入方法といえるだろう。

もちろんカーボンモデルに乗ったらそちらがが欲しくなってしまうのはわかっているが、下りでガンガン攻めた走りをしたいなら一押しはこのモデルといえる。

ちょっと残念な点

今回のモデルはアルミモデルで、装着されているパーツもデオーレクラス。フレーム、サスペンションには全く残念な要素はないが、ホイール周りと駆動系には物足りなさを感じてしまう。前向きに考えると、このポイントを補うだけで、不満のないエンデューロバイクを組み上げることができる。

各部詳細

ブラックの試乗車で細部が解りにくいため、細部はカーボンモデルで撮影したが、各部の作り込みはさすが。チェーンが暴れてもフレームが傷つかないようにカバーされ、内装のワイヤーも非常にスマートなルーティングだ。後輪の巻き上げた土をユニットやリンク部に巻き込まないガードなども実戦向きな装備だ。

試乗車スペック

ALLOY 30 ¥541,200

FRAME MATERIALFORM™ Alloy 160mm Travel RIDE-4™ Adjustable Geometry
SIZES M(29″)
REAR SHOCKFox Float X Performance 230x60mm
FORKRockShox Zeb Select RC 170mm 44mm Offset
CRANKARMSShimano Deore 24mm Spindle 170mm 
CHAINRINGS32T
B/BShimano Threaded BBMT501-B
PEDALS
CHAINShimano M6100
FREEWHEELShimano TC500 Boost 148mm
CHAINGUIDE
FRONT D
REAR DShimano Deore 12S
SHIFTERSShimano Deore 12S
BRAKE CALIPERSShimano MT6120 4 Piston Metal Pads
FRONT BRAKE ROTORShimano RT64 203mm
REAR BRAKE ROTORShimano RT64 203mm
BRAKE LEVERSShimano MT6120
HEADSETFSA ZS56|66 Reach Adjust| 0mm Cups Installed +/- 5mm Cups Included
HANDLEBARRocky Mountain AM 780mm Width25mm Rise、9° Backsweep 、5° Upsweep、31.8 Clamp 
STEMRocky Mountain 31.8 AM 5° Rise 40mm 
SEATPOSTX Fusion Manic Composite 30.9mm、170mm
GRIPSODI Elite Pro Lock On 
SADDLEWTB Volt 142 
FRONT HUBShimano TC500 15x110m
REAR HUBShimano TC500 Boost 148mm 
RIMSWTB ST i30 TCS 2.0 Tubeless 32H Tubeless Tape & Valves Incl
FRONT TIREMaxxis Minion Assegai 2.5 WT EXO Tubeless Ready 
REAR TIREMaxxis Minion DHR II 2.4 WT EXO Tubeless Ready 
WEIGHT17.28kg

ジオメトリー

MD-P1MD-P2MD-P3MD-P4
Top Tube Horizontal584584584584
Head Tube Angle6363.363.563.8
Head Tube Length105105105105
Seat Tube Angle7777.377.577.8
Seat Tube Length410410410410
Rear Centre440440440440
Bottom Bracket Drop38343127
Reach450453455458
Stack630630630630
Standover Height792794796798
Wheelbase1244124312431242
※ P1(SLACK)、P2、P3、P4(STEEP)

リアルエンデューロを戦えるバイク

荒れた路面でも失速感が少なく、ちょっと重いギアでも踏んでいける。フロント周りの剛性も抜群で、ちょっとの障害物であれば楽に踏み越えることができ、常設コースでも安心してハイスピード走行ができる。

– 若林正幸

下り性能
剛性
価格
汎用性

Summary

抜群の剛性によって競技レベルでも躊躇なく攻めた走りができるのに、この価格というのは非常にリーズナブル。自分の乗り方にベストなジオメトリーを突き詰めることで手放せない1台となるはずだ。

4.3

問:エイアンドエフ