生まれ変わったSENTINEL V3に試乗
TRANSITION BIKESがメーカー初となる、リア29、27.5ホイールに対応したモデルをリリース。いままではホイール径を変更することで変化するBBハイトやジオメトリーの変化をきらい、それぞれ専用ホイール径のモデルをリリースしていたが、十分な開発期間を経て、満足できる性能を備えてリリースされた。
既に日本国内への第1便は入荷し、発注済みのショップへのデリバリーが開始している。
今回試乗したのはカーボンフレームにSHIMANO DEOREを組み込んだ最もベーシックなモデル。3種類ラインナップするカーボンモデルでは一番廉価なモデルとなる。
最上級モデルにはSRAM XO AXSコンポに前後サスペンション、シートポストにFOXのファクトリーグレードを採用。ミドルグレードにはSHIMANO XTに、ROCKSHOXのULTIMATEグレードのサスペンションが採用したモデルとフレームセットが用意され、それぞれ3色展開となっている。
僕自身は旧型となってしまったSENTINEL CARBON V2のMサイズを所有していて、トレイルやパークで乗り込んでおり、新型のモデルがどう進化したのか非常に気になるところ。残念ながらゲレンデシーズンは修了してしまっており、地元のトレイルでの試乗となった。
SENTINEL CARBON V3
\1,353,000(XO AXS)、¥1,056,000(XT)、¥836,000(DEORE)、¥583,000(FRAME)
2020〜2024まで販売されていたV2と、今回のV3への変更点は、一見では大きな変更点が解りづらく、装備のアップデートと思われるかもしれないが、全く新設計されたフレームとなっており、細部のジオメトリーはもちろんのこと、ダウンチューブとBB周辺をよりマッシヴにしたことで剛性を向上させるなど、細部に手が入れられている。
一番目立つのはダウンチューブのストレージボックス。この辺りは今どきのトレイル・エンデューロモデルと同様だが、ボトルケージマウントにFIDLOCKマウントを標準装備し、ウォーターボトルマウントと完全に分離させ、よりボックスへのアクセスを容易にしている。また、リアホイールを2サイズ使用できるようにリアサスペンション下部にジオメトリー調整用のフリップフロップチップを採用し、ディレイラーマウントをUDH方式に変更するなど、各部ともV2に比べ進化を遂げている。
各部詳細
グローブをしていても開閉しやすいレバー
開口部が大きく内容物を取り出しやすい
独立したストレージボックス
ボトルケージを分離し、単独で開閉できるストレージボックスは、アクセスしやすいBB近くに設けられたストレージボックスは十分な容量で、内容物をカバーする専用袋が付属する。従来と同じくトップチューブ下部にもホルダー用のダボが設けられている
最新のストレージ『Fidlock」台座を標準装備
リンク部をカバーし、耐久性を向上
Fidlock台座を標準装備
コンパクトなフレームでもボトルの着脱がしやすいFidlockの台座を標準装備。いろいろな拡張性が期待できる
下部リンクカバーを装着
湿った路面などから巻き込む土や砂利が溜まりやすかった下部リンク部分にカバーを設けたことで異物の侵入を防ぎ、ベアリングの耐久性向上を図っている
ジオメトリー調整用のフリップフロップチップ
効果的で耐久性のあるチェーンガード
リアサイズの変更を考慮したリンクチップ
リアを29と27.5に変更する際にジオメトリーを最適化させるためにリアサス下部にジオメトリー調整用のフリップチップを装備。ヘッドアングルとBBハイトを変更することができる
より効果のあるチェーンガード
ハードな路面でチェーンが暴れてもチェーンステーに傷をつけないように、大きめのリブを採用した硬質ゴム製のガードを標準装備
ケーブルはフル内装
特徴的なトップチューブとシートチューブの接合
フル内装ケーブル
すっきりとしてライド中のトラブルを防ぐフル内装システムを採用。個人的にブレーキはメンテナンス時の着脱が面倒なので外装が好みだが‥
剛性感のある接合面形状
トップチューブとシートチューブの接合部は独特な形状でいかにも捻れ剛性に効きそうな形状。フロント三角のしっかりとした感じはこの辺りからも生じている
TEST RIDE
跨った感じのファーストインプレッションでは、バイク全体が軽快に感じられた。駐車場でちょっと乗っただけでも全体的にしっかりとした印象をうけ、セッティングもそこそこに、すぐにトレイルへ。
乗る前は、「V2とそんなに大きな変化はないだろう」とタカを括っていたが、実際にライドするとさまざまな場面で進化を感じることができた。
いままでのモデルとは明らかに進化しているのは明白で、しっとりとしながら芯のあるライドフィールで、バンクの角度に合わせての倒し込みや切り返しも軽快。一度ラインを決めて荷重をかけると安定し、スゥーッと素直にラインをトレースする。いままでのバイクよりも若干リア気味に乗るとバイクが勝手に回頭していくのがよくわかり、全体的な安定感が増している感じだ。
トレイルでの取り回しやすさも抜群といえる。常設コースとは異なり、自分がコントロールできる適度なスピードマージンを取った乗り方では終始安定し、しっとりとした上質な乗り味とバイクコントロールを楽しむことができた。途中一面落ち葉でラインもおぼろげな場所でもしっかりと自分の行きたい方向にバイクを向けてブレーキをリリースするとスッと前に進み、しっかりと荷重していれば落ち葉の下に隠れた「隠れキャラ」をラフに踏んでも大きく姿勢を崩したり、弾かれることなく軽快に転がっていき、このモデルの開発の原点ともいえるトレイルを気持ちよく楽しむために作られているということを体感することができた。もちろんエンデューロ競技などで勝負をかけて突っ込んでいく場面でも大きな破綻をきたすことなく意のままに操ることができる性能は有しているので、速くてものんびりでも楽しめ、誰にでも勧められるバイクに仕上げられている。続いて自分のV2もライドしてみたが、やっぱり楽しんでライドすることができ、改めてSENTINELの基本性能の高さを実感しながらも、V3への進化を理解することができた。
正直乗り込んでいくとフロントのサスペンションをもっと調整機能と剛性感が欲しいとか、ホイールをもっと軽量・高剛性なモノに変更したいなど色々と要求が出てしまうが、ブレーキ、変速に関してはこの仕様でも十分。今回の試乗車の完成車スペックからの唯一の変更点としては、LOVEBIKESが扱いを開始したVITTORIAタイヤが装着されており、フロントにVITTORIA MAZZA RACE 2.6、リアにMOSTRO RACE 2.4という組み合わせで、十分なサイドグリップと軽快なコギの軽さを演出しているところも乗り味に大きく影響している。
LOVEBIKESは、2025年もさまざまなイベントに出展する予定ということなので、会場で見つけたらぜひ乗ってみてほしい。
どんな人にオススメか
フロント160mm、リア150mmというトレイルバイクのど真ん中に位置するモデルで、年中トレイルを楽しみたいライダーにイチ押しといえる。ビギナーはもちろんのこと、基本的な性能が非常に高いので、どんな乗り方にも対応できるので、エキスパートライダーも存分に楽しむことができるだろう。ハイスペックのコンポーネント、サスペンション、ホイールを装着しても絶対に負けないフレームなので、ライダーの要求する全てを受け入れてライディングできるバイクといえる。エントリーグレードのモデルでも里山トレイルから富士見パノラマのレースコースまでどこでもライダーの実力を発揮することができるはずだ。
ちょっと残念な点
大きなマイナス面はないのだが、ハイスピードで楽しむにはフロントサスペンションにもう少しセッティングの幅が欲しく、レース参戦を考慮すればその辺りがアップデートの対象となるだろう。いまSENTINELのV2に乗っているライダーに乗り替えを勧めるかというと、絶対に乗り換えた方がイイといえる性能差はないといえるが、買い替えや載せ替えを考慮しているのならマレット化して異なった乗り方もできるし、進化した素晴らしい乗り味を味わうことができる。
個人的な意見だが、女性やユースターゲットを考慮したXSサイズをラインナップで150cmのライダーも乗ることができるXSサイズをラインナップしているのであれば、もっと大胆なカラーラインナップが欲しかった。また、今回は前後29でのライドしかできなかったが、次回はマレットで乗ってマレット専用モデルのPATROLとの違いを楽しみたい。
GEOMETORY比較
透過のホワイトが新型フレーム
上の写真、下の表と見比べるとヘッドアングルとシートアングルの違いとBB DROPが異なっており、よりリアに乗ることでフロントが安定したライディングフィールになっている。前三角フレームの形状も、かなり太くなって剛性がアップされているのがV2と重ねた写真でわかるはずだ
SIZE | V3 Mサイズ | V2 Mサイズ |
ST LENGTH | 390 | 390 |
TT LENGTH | 586 | 585 |
REACH | 455/451 | 450 |
STACK | 621/624 | 622 |
STANDOVER | | 688 |
HT ANGLE | 64/63.6 | 63.6 |
HT LENGTH | 110 | 110 |
EFFECTIVE ST ANGLE | 78.7/78.3 | 77.5 |
CS LENGTH | 442/440 | 440 |
BB HEIGHT | 350/344 | ー |
BB DROP | 25/11 | 29 |
WHEELBASE | 1237 | 1233 |
TEST BIKE SPEC
| CARBON DEORE |
FRAME MATERIAL | Sentinel Carbon |
REAR SHOCK | RockShox Super Deluxe Select (205x60mm) |
REAR TRAVEL | 150mm |
FORK | RockShox Lyrik Base |
FORK TRAVEL | 160mm |
CRANKARMS | Shimano Deore M6100 165mm |
CHAINRINGS | 30T |
PEDALS | – |
CHAIN | Shimano Deore M6100 |
CASSETTE | Shimano Deore M6100 10-51T 12S |
FRONT D | – |
REAR D | Shimano Deore M6100 SGS 12S |
SHIFTERS | Shimano Deore M6100 iSpec EV |
BRAKE CALIPERS | Shimano Deore M6120 4 Piston |
FRONT BRAKE ROTOR | Shimano RT66 203mm |
REAR BRAKE ROTOR | Shimano RT66 203mm |
BRAKE LEVERS | Shimano Deore M6100 |
HEADSET | FSA No.57E |
HANDLEBAR | RaceFace Chester (800x35mm) |
STEM | RaceFace Aeffect R (40mm) |
SEATPOST | SDG Tellis (170mm) |
GRIPS | ODI Elite Flow Lock-On |
SADDLE | SDG Bel Air 3 |
FRONT HUB | Novatech D791SB |
REAR HUB | Novatech D902SB |
SPOKES | Pillar Double Butted |
RIMS | WTB ST i30 |
FRONT TIRE | VITTORIA MAZZA RACE 29×2.6 |
REAR TIRE | VITTORIA MOSTRO RACE 29×2.4 |
WEIGHT | 15.21kg |
PAINT COLOR | Graphite Grey |
※試乗車のため一部変更点あり
非常に満足度が高いトレイルバイク
ハイスピードでは自在に操る楽しみ、ロースピードではしっとりとした乗り味が楽しめる。走っているフィールドが大きく異なる海外メディアでもトレイルのベンチマークモデルとなっている理由がよくわかる。
– 若林正幸
Summary
現在SENTINELに乗っているライダーに買い替えを勧めるほどの性能差があるかといえば、ちょっと難しい価格帯だが、本当にライドフィールを重要視し、いいバイクに乗りたいのであればフレームの載せ替えを考えても良いと思う。
問:LOVEBIKES
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