下り系 VITTORIA タイヤの選び方

最近注目を集めている下り系VITTORIAタイヤ
イタリアに本社を置き、ロードの世界では高いシェアを誇るタイヤブランドが「VITTORIA」。
ロードバイクやシクロクロスではハイパフォーマンスタイヤブランドとして、レーサーからホビーユーザーまで幅広いユーザー層に支持されているブランドだ。
いままでMTBの下り系ではあまり注目されることがなかったが、XCタイヤ以外にも下り系モデルにも力を入れたモデルを投入。昨年からエンデューロ、ダウンヒルレースで使用する選手も多い。特に若手の注目株でENSチャンピオンの「幾田悠雅」選手が愛用しており、注目を集めているタイヤブランドといえる。
今回はトレイルモデルのTRANSITION SENTINELと、ダウンヒルバイクのTR11に装着して数ヶ月間実走テストを行なった。
タイヤ構造の特長
数種類展開している下り系タイヤの中で、MAZZA RACE ENDURO と MOSTRO ENDURO RACE は1Cのシリカとグラフェンが使用されたソフトなコンパウンドを採用したレース向けに開発されたモデルで、RACEの名を省いたENDUROは、4Cコンパウンドでセンターとサイドに異なるコンパウンドを採用。同様のパターンを採用しながらコンパウンドとケーシング構造の変更によって用途と狙った性能をわけ、VITTORIA 独自の配合で製造されるグラフェンとシリカ素材は、耐摩耗性に優れ、ブロックが変形しても元の形に戻るスピードが速くなり、結果路面追従性の向上につながっている。さらに湿った路面でのグリップも強化されている。この特徴的な素材は、それぞれ狙った性能を発揮させるために配合を変更して使用されている。
ブロックパターンにはサイドに細かいサイピングを施すことにより、コーナーでのグリップ性能を向上させている。MOSTROはセンターにも施され、ブレーキの効きにも寄与している。通常サイピングを施すとライディング時の摩耗が進むのだが、グラフェンとシリカの配合によって優れた耐摩耗性を備えている。もちろんソフトなRACE ENDUROでもその性能は秀でているといえる。
RACE ENDUROタイヤ構造
グラフェンとシリカを用い、1Cコンパウンドレース向けの構造を採用し、スピードとコントロール性を重視し、より早く下ることができるように設計。しなやかな多層ナイロン構造で疲労度を低減させ、各部にパンク防止ベルトを内包している

ENDUROタイヤ構造
ブレーキ、コーナリング、耐久性のバランスが考慮され、4つのコンパウンドを採用することで、各部に必要な性能が与えられた。摩耗と穿刺に耐える二重構造のナイロンを採用。

タイヤセグメント
下記の図にVITTORIAが公表している MTBタイヤのセグメント表があるが、国内フィールドの路面状況ではMIXED路面が中心といえ、MAZZA、MOSTROはその中核となるモデルといえ、日本の土壌に最もマッチするタイヤといえる。

MAZZA RACE ENDURO

レースに適した安定したグリップ力を発揮
フロント、リア共に安定したグリップ力を発揮。2.6”の太さのタイヤをDHバイクの前後に装着して富士見のコースを走行したが、終始安定したグリップがあり、高速でも、テクニカルなセクションでも安心して走行することができた。グリップ感も掴みやすく、砂利が浮いているような路面でいきなりグリップを失うことが少なく路面状況もわかりやすいと感じた。滑り始めもマイルドで、一気にグリップが抜けにくいので、グリップ感に慣れればガンガン突っ込んでいけるといったイメージでDHレースでも問題なく使用することができる。
エンデューロバイクに装着すると下りは大きな信頼性を得ることができるが、上りではハイグリップタイヤにありがちな”もっさり”とした乗り味で転がりが重たい印象を受けた。特に上りでは圧倒的にMOSTROの方が軽快に走行することができたので、リアだけ変更しても良いだろう。
ベストな使い所としてはハイスピードのDHやエンデューロバイクのフロントに装着するのがベストといえる。
SPEC
| サイズ | ETRTO | ケーシング | 重量 | 価格 |
| 27.5×2.4 | 60-584 | Enduro Race TLR | 1220g | ¥12,650 |
| 27.5×2.6 | 65-584 | Enduro Race TLR | 1310g | ¥12,650 |
| 29×2.4 | 60-622 | Enduro Race TLR | 1340g | ¥12,650 |
| 29×2.6 | 65-622 | Enduro Race TLR | 1410g | ¥12,650 |
MAZZA ENDURO

トレイルでの安心感と耐久性に優れる
あまりハイスピードでないアップダウンのあるトレイルライドでは、RACEより耐久性に優れ、トレイルのスピード域に”ちょうどいい” グリップを味わうことができる2.4”がオススメだ。リアに装着してもあまりコギの重さを感じることもない。もちろん絶対的なグリップはRACEの方が勝っているが、荒れた路面が多く、濡れた木の根や深い落ち葉のあるような場所ではフロントに2.6”、リアに2.4”といった使い方もあり。
また、フロントにグリップの信頼性が高いMAZZA RACE ENDURO 、リアは転がりとコントロール性を重視してMAZZA ENDUROといったコンパウンド違いの使い方も賢い選択といえる。
SPEC
| サイズ | ETRTO | ケーシング | 重量 | 価格 |
| 27.5×2.4 | 60-584 | Enduro TLR | 1200g | ¥11,550 |
| 27.5×2.6 | 65-584 | Enduro TLR | 1300g | ¥11,550 |
| 29×2.4 | 60-622 | Enduro TLR | 1300g | ¥11,550 |
| 29×2.6 | 65-622 | Enduro TLR | 1400g | ¥11,550 |
MOSTRO RACE ENDURO

縦方向のトラクションにも優れた性能を発揮
テスト時に使用したのは29×2.4。エンデューロバイクに前後に装着してENSの白馬岩岳ステージで走行したが、ブロックが高く、柔らかく高めのブロックのタイヤでありながら驚くほど転がりがよく、全く不安なく安心して走行することができた。富士見パノラマのコースやハイスピードのDHライドであればより安心できる2.6の太さが欲しいところだが、リアの転がりを考慮すると2.4でもかなりのペースで走行することができる。グリップ感の掴みやすさはMOSTROよりもMAZZAの方がはっきりとしているので、高速域での安心感はMAZZAに軍配が上がるが、転がりとブレーキングはMOSTROの方が優れているので、どちらを選択するかで大きくタイムも変わりそうだ。
また、ウェット路面でもブレーキング性能に優れており、しっかりと止まることができるのもこのタイヤの特長の1つといえる。通常このような性能であればペダリング時に抵抗が生じやや重さを感じるのだが、軽く漕げるし転がり抵抗も少ないのでまさにエンデューロ競技にはうってつけのタイヤといえ、ウェットや柔らかい路面でも安定した走行が可能で、泥詰まりのひどい状況では試せていないが、新設の掘り返された路面などでも高めのノブがしっかりとグリップしてくれる印象を受けた。
SPEC
| サイズ | ETRTO | ケーシング | 重量 | 価格 |
| 27.5×2.4 | 60-584 | 2-ply Reinforced Nylon 120 TPI | 1420g | ¥12,650 |
| 27.5×2.6 | 65-584 | 2-ply Reinforced Nylon 120 TPI | 1480g | ¥12,650 |
| 29×2.4 | 60-622 | 2-ply Reinforced Nylon 120 TPI | 1490g | ¥12,650 |
| 29×2.6 | 65-622 | 2-ply Reinforced Nylon 120 TPI | 1560g | ¥12,650 |

優れた耐久性も兼ね備える
上の写真は実際に自己所有のDHバイク、トレイルバイクに装着し、富士見で4日、トレイルで数日、岩岳で丸1日乗ったタイヤだが、しっかりと角が残り、やっと髭が取れた程度度で、ほとんどグリップも落ちておらず、ハイグリップタイヤでありながら耐久性にも優れている。さらに他社のハイエンドタイヤに比べてコストパフォーマンスも良いタイヤといえるだろう。ただし、やはり新品のタイヤと比べると摩耗しており、徐々にグリップも落ちているので、サイドのサイプが浅くなってきたらそろそろ交換時期と考えたい。
総評
試したタイヤ全般にいえることだが、ハイグリップタイヤでありながら摩耗が少なく長寿命という印象。通常新品のレースタイヤを装着し、富士見パノラマや岩岳を数日走行すると、ブレーキングやコーナリングの負荷によってブロックの角が削れたり摩耗してグリップ力が落ちていき、大幅に性能が低下していくのだが、あまりタイヤに関してケアせずに何日か走行しても、目にみえる大きな損耗がなく、大きな性能低下が起こっていないのは驚いた。
どのタイヤもグリップが抜けるタイミングがわかりやすいのも特長で、急劇にグリップを失うことが少ないように感じられる。もし急に滑ったとしてもコントロールできる余地が残されているというイメージだ。富士見パノラマのブルーホーネット下部や、ツイスター後半の超スリッピーな路面状態で滑ってもリカバリーすることができるので安心感があり、改めてトラクションをかけ直せばグリップを取り戻すことができるので、一気にブレイクして転倒することも少ないだろう。
自分が使った組み合わせのおすすめとしてはフロントにグリップ感の大きいMAZZA、リアに転がり重視でMOSTROが良かった。太さに関しては試せていないが、エンデューロなら転がりとコギの軽さを重視してフロント2.6”にリア2.4”。ゲレンデやトレイルで安心して走行するなら前後2.6”の組み合わせが良いだろう。
最近待望のMOSTRO RACE ENDUROには27.5サイズと2.6幅のタイヤが初入荷したことで、前輪にはグリップ感がつかみやすいMAZZA RACE ENDURO、後輪に転がりの軽いMOSTRO RACE ENDUROを使用するなど、それぞれの長所を上手く採り入れて使用することで、コースや路面状況に対応した使い方も可能となっており、エンデューロ競技や国内のダウンヒルレースでもサポートライダーの幾田選手らが活躍している。
ENSや各イベントなどでタイヤの貸し出しサービスなど、ブースの出展も積極的に行っているので、見かけたら是非利用して、VITTORIAタイヤの性能を試して欲しい。この性能にしてこのプライスはバーゲン価格と感じるはずだ。
また、シーラント、チューブレスリムテープ、インサート、チューブレスバルブ、ツールに関してもタイヤメーカーならではのラインナップにも魅力的な商品が用意されている。

