KONA PROCESS X DH

バイクパークに最適な新ジャンルのDHモデル

ダウンヒルバイクというと前後200mm前後のストロークというイメージだが、KONAのラインナップ中最もストロークの長いリア162mmトラベルのPROCESS Xに、ロックショックスのダブルクラウンフォークを装着したモデル。

いままでも下り系のシングルクラウンモデルにダブルクラウンフォークを装着し、フロントの剛性やストロークをアップすることは行われていたが、ジオメトリーやBBハイトなど、ベストなポジションで乗るにはさまざまな部分の調整が必要だったが、今回試乗したバイクは完成車としてメーカーのお墨付きを得たモデルだ。もちろんジオメトリー、BBハイトなど、どこにも無理した部分はなく、新設計されたバイクといってもおかしくない性能を備えている。

もともと高い剛性をもち、トレイルで軽快な走りが可能なPROCESS Xが、190mmにストロークをダウンされたダブルクラウンフォークとマレットホイールによって、大きな衝撃を受けてもショックを吸収。さらに快適な旋回性能が与えられている。

また、国内シーンではダブルクラウンを装着してダウンヒルコースに対応させるなど、下り全般に汎用性をもたせた造りになっている点も見逃せない。このモデル1台で幅広いグラビティーシーンに対応することができるのが強みだ。上りに関しては得意ではないが、このあたりはバイクの使用用途がパークということもあるが、コギはダウンヒルバイクよりも圧倒的に軽快だ。

今回は、富士見パノラマリゾートでレンタルや整備、パーツ販売などを手がけるBGHの協力のもと、富士見パノラマオープン初日に1、2、3と絶景トレイル、新世界トレイルでテストライドを行った。

KONAのラインナップ

現在ダウンヒルモデル、フリーライドモデルというジャンルでの棲み分けを廃し、ダブルサスペンションモデルはPROCESSシリーズに集約され、ストローク長によって、X(162mm)、153、134と3モデルに別けられている。その中でも最もストロークがあり、ハードな走行を想定しているのがこのモデル。

他にもダートジャンプモデル、リジッドモデル、ファットタイヤモデルなど幅広いラインナップを揃えるブランドで、どのモデルも高い完成度を誇っている。

試乗インプレッション

もともとKONA OPERATORの26"、27.5"や初代や現行のPROCESSなど、この方式のリンク形状のバイクに乗り慣れていたからということもあると思うが、乗り出しからバイクに慣れるまではすぐだった。跨がると、DHバイクに近いと感じたが、ゴンドラ駅からコース1に向かうところで、すでにコギの軽さを実感。林道を過ぎ、コースの脇に設けられたクネクネといやらしいコーナーが続く緩斜面の林では、DHバイクでは煩わしいと感じられる低速での切り返しが多いのだが、短めで高い剛性をもつリアバックのおかげで小気味のよい切り返しとコーナリングが可能で、気持ちよい走行ができた。コーナーの立ち上がりで少し漕いでみても、必要以上にリアサスペンションが動くことなく、しっかりと路面にトラクションが掛かる。フロント、リアタイヤの走行ラインを明確にイメージすることができ、思いのままにラインを選び、走行することができた。

通常リアのストロークをそのままに、フロントのストロークだけ延長すると、ストローク時の姿勢変化によってハンドリングなどに変なクセが出てしまうのだが、フロントのストローク初期からボトムまで、しっかりと安定感のあるグリップと、軽快なハンドリングを感じることができた。また、細かいコーナーが続く場所では、ダウンヒルバイクにはない軽快でクイックな切り返しができ、フロントを通せば、あとは後部に少し加重するだけでリアがしっかりと追従して曲がってくるという感覚だ。高速域での安定感こそダウンヒルバイクに劣るものの、とんでもない急斜面や、どこを走行すればいいか迷うようなハードなロックセクションを除けば、なにも気負うことなく走行できる。ストロークを190mmに縮められ、マレット化されているとはいえ、こんなに軽快で、楽しく走行できるのは驚いくとともに、改めてPROCESS Xのフレーム・サスペンションレイアウトの優秀さに感心させられた。上級コースが開いていなかったのも残念だが、もちろんそのコースもラクに走破できるポテンシャルをもっている。

どんな人にオススメか

ハードなDHレースではなく、常設コースのある程度整備されたコースを走行するのであれば、十二分に楽しむことができる。また、ファクトリーライダーのエディー・レイノルズが2023年クランクワークスウィスラーのウィップオフ選手権で優勝していることからも、ビッグジャンプでもビクともしない剛性があり、扱いやすさを併せもっているので、タイムを削るような走りをするというよりも、軽快感とバイクコントロールの楽しさを味わいたいライダーにオススメ。

昨年、今年と全日本選手権が開催されるウイングヒルズのコースは日本でも屈指のハードコースであり、もう少し懐が深く安定感に優れたダウンヒルバイクが優位だろうが、通常営業している国内の常設コースや、ダウンヒルシリーズへの参戦には、ベストな選択といえるだろう。

現在ではハイピポットを採用したモデルや細かいジオメトリーが変更可能なモデルなど、プラスαの機能が付いているバイクが多くラインナップするが、無駄な機能を付けることがないのは、もともとの基本設計や開発意図が優れているからともいえる。

コストパフォーマンスに優れながら、従来モデルの優位点をしっかりと受け継いでいるので、コースを縦横無尽に走り尽くしたい貪欲なライダーにオススメといえる。

各部詳細

試乗車のサイズ感

以前試乗したPROCESS X CRは、173cmの自分なら、トレイル中心ならMサイズ、常設コースではLサイズと書いたが、今回のモデルでは、富士見のコースでもMサイズで全く問題なくライディングすることができ、むしろアグレッシブなライディングを楽しみたいならこのサイズがベストで、どのコースでも本気で楽しむことができる。

ちょっと残念な点

前後サスペンションは非常によい動きをしており、不満点はあまりないのだが、やはり変速系にはもう少し上位モデルを使用したい。全体的に気持ちよい感覚で走行できるのだが、変速操作によってその一部が阻害されているような気持ちが残った。SRAM GXやSHIMANO DEORE XTを装備すれば全く不安感なく楽しめるだろう。

試乗車スペック

価格:¥594,000

FRAME MATERIALKona 6061 Aluminum Butted 162mm Travel
SIZESM(マレット)
REAR SHOCKRockShox Super Deluxe Coil Trunnion
FORKRockShox Boxxer Select DebonAir 190mm
CRANKARMSRace Face Aeffect R
CHAINRINGS34T
B/BRace Face PF92
PEDALS
CHAINKMC X9
FREEWHEELSSRAM PG920 11-34t 9s
CHAINGUIDEMRP
FRONT D
REAR DSRAM X7
SHIFTERSSRAM X5
BRAKE CALIPERSSRAM Guide T
FRONT BRAKE ROTORSRAM Centerline 200mm
REAR BRAKE ROTORSRAM Centerline 200mm
BRAKE LEVERSSRAM Guide T
HEADSETFSA Orbit 1.5 EP ZS
HANDLEBARKona XC/BC 35
STEMRace Face Chester
SEATPOSTKona OB 31.6mm
SEAT CLAMPKona Clamp
GRIPSKona Key Grip
SADDLEWTB Volt
FRONT HUBFormula 110x20mm
REAR HUBFormula 148x12mm
SPOKESStainless Black 14g
RIMSWTB ST i30 TCS 2.0
FRONT TIREMaxxis Assegai DH 29×2.5″ WT
REAR TIREMaxxis Minion DHR II DH 27.5×2.4″ WT
PAINT COLORGloss Metallic Grape w/ Furnace Fade & Purple Decals
2024/5 現在のスペック

ジオメトリー

SIZESML
ST LENGTH380380420
TT LENGTH569594623
REACH440465490
STACK632632637
STANDOVER700700710
HT ANGLE63.563.563.5
HT LENGTH110110115
ST ANGLE77.977.977.8
CS LENGTH440440440
BB DROP202020
BB HEIGHT345345345
WHEELBASE122112461276
FRONT CENTER783808838
FORK LENGTH585585585
FORK OFFSET444444
試乗車はMサイズ

軽快感があり、DHパークに最適なバイク

走行時の軽快感は抜群。非常に荒れたロックセクションや根っこエリアでの安定感・安心感はDHバイクに劣るが、常設のパークなど、ある程度整備されたコースならこのバイクは自在に気持ちよく走行できる。

– 若林正幸

下り性能
剛性
価格
軽快感

Summary

ウイングヒルズのようなハードなコースではDHバイクに軍配が上がるが、今回試走した富士見パノラマの1、2、3から絶景トレイルなどはDHバイクよりも軽快で、楽しんでライディングができる。

4.5

富士見パノラマリゾートのBGHでPROCESS X DHのレンタルを開始

今回試乗したPROCESS X DHは、富士見パノラマリゾート内のBGH(バックヤードガレージハウス)でレンタルバイクとしても用意されている。サイズはS、M、XLの3種。もちろんしっかりとした整備が行われているので安心して走行できる。レンタル料金は1日で¥12,000。スクールやレンタルなども行われ、タイヤやブレーキパッドなどの消耗品や用品も扱い、修理も受け付けているので急なトラブルにも対応できる。

取材協力:富士見パノラマリゾートBGH

問:エイアンドエフ